殺人鬼を主人公にした映画やドラマは数多くあります。
大抵の場合、物語が始まるところから、すでに殺人鬼は異常な人物として描かれます。
しかし、ドラマ「ベイツ・モーテル」が特徴的なのは、普通の高校生に見える主人公が、
「いかに殺人鬼になっていったのか」という過程を克明に描いているところにあります。
「ベイツ・モーテル」はサイコ・サスペンスの金字塔であるヒッチコックの映画「サイコ」をモチーフに、時代を現代に移したドラマ。
「サイコ」の主人公ノーマン・ベイツがまだ若かりし頃という、「サイコ」の前章となっています。
ノーマンがなぜあのような異常者になったのか?
「ベイツ・モーテル」では、観る者は主人公ノーマン・ベイツが徐々に壊れていくプロセスを、ただハラハラしながら見守るしかありません。
しかも、異常なのはノーマンだけではありません。
登場する人物ほぼすべて、どこか普通ではない人たちばかりです。
みな危うさを抱えていて、なんとかバランスを保とうとしながらも、どんどん進んではいけない方向へと進んでいくのです。
誰が一体この負のスパイラルを止められるのか?それともまた新たな負を加えるのか?
そんな先が見通せないスリリングな展開も納得なのが、
企画・製作総指揮・脚本は、大ヒットドラマ「LOST」を手掛けたカールトン・キューズ。
「ベイツ・モーテル」もケーブル放送局A&Eで最高視聴率をたたき出しました。
高い評価も得て、数々の賞にもノミネートされています。
では、その「ベイツ・モーテル」の魅力をさらにたっぷりご紹介しましょう!
「ベイツ・モーテル」が最高視聴率をたたき出した理由
「ベイツ・モーテル」の物語は、まずノーマ・ベイツが、息子のノーマンを連れて、オレゴンの田舎町にやってくるところから始まります。
夫が亡くなったことをきっかけに、ノーマは息子ノーマンと二人で新しい町で心機一転、古いモーテルを買い取って経営することにしたのです。
ノーマは息子ノーマンを溺愛する母。
ノーマンはそんな母から逃れられない極度のマザコン。
映画「サイコ」を彷彿とさせる二人の関係や、家のたたずまいからして、すでに良からぬことが起こる気配に満ちています。
冒頭から、このノーマとノーマン親子が住む家で、事件が起きます。
二人はその事件の暗い秘密を抱えながらも、ノーマンは思春期の男の子らしく恋愛もします。
母ノーマも頼りになる副保安官とデートに出かけますが、この二人の恋愛も思いもよらぬ方向へと進んでいきます。
やがてノーマの長男であり、ノーマンの異父兄でもあるディランが移り住んできます。
同じ息子でも、ディランに対してはかなり冷たい母ノーマ。
憂いを帯びた寂しそうな目をしているディランは、もしかしたらこのドラマに登場する唯一まともな人間?と思わせる顔も見せます。
そんなディランも違法なビジネスに関わっていきます。
しかも、それは彼らが住む町が関わるビジネスでもあります。
つまり、平和そうに見える町そのものも異常なのです。
ノーマは息子ノーマンの普通ではない部分に気づくものの、一人ではどうすることもできません。
ノーマンへの過度な愛情で、彼を管理しようとします。
一方、ディランの忌まわしい出生の秘密も明らかにされます。
様々な人物も絡んできて、物語が進めば進むほど、驚くべきことが次々と起こります。
もはや誰にももう救いはないのか?というところまで、物語は緊張感を帯びてゆきます。
続きを見ずにはいられなくなる。これぞドラマの醍醐味!
このドラマが全米で大ヒットしたのには、やはりたしかな理由があったのです。
母ノーマを演じる女優ヴェラ・ファーミガ
ノーマンの母親ノーマ・ベイツを演じるヴェラ・ファーミガは、
映画「マイレージ、マイライフ」でアカデミー助演女優賞やゴールデングローブ助演女優賞にもノミネートされた女優です。
「ベイツ・モーテル」ではサターン主演女優賞も獲得しました。
まず、ヴェラが女優として注目を浴びたのは2005年の映画「Down to the Bone」。
ドラッグ中毒の母親を演じ、サンダンスなど数々の映画賞で主演女優賞を獲得しました。
女優としてだけでなく、ヴェラは「ベイツ・モーテル」では製作総指揮の一人でもあります。
このドラマではヴェラは歌やピアノも披露しており、多才ぶりがうかがえます。
過去の出演作品を見ても、過保護な母親役はヴェラの得意とする役どころです。
また、映画「死霊館」や「エイミー」などのホラー映画への出演も多く、
「Scream Queen(絶叫クィーン)」として、恐怖演出を得意とする女優ともいわれています。
1973年、ヴェラは7人兄弟の2番目として、アメリカのニュージャージ州に生まれました。
両親はウクライナからの移民で、ヴェラは6歳まで英語を話せませんでした。
高校生の頃、学校の演劇の催し物で主役の座を射止めた後、演技に興味を持ち始めます。
シラキュース大学で演劇を学んだ後、1996年にブロードウェイでデビュー。
その後もヴェラは数多くの映画やドラマに出演し、2011年にはドラマ映画「ハイヤー・グラウンド」で監督デビューも果たしました。
このとき、21歳年下の妹で、女優のタイッサ・ファーミガと共演しています。
私生活ではヴェラは1997年にフランス人俳優のセバスチャン・ロッシェと結婚、2004年に離婚しています。
2008年にミュージシャンのレン・ホーキーと再婚。
2009年に息子フィンくん、2010年に娘ジッタちゃんが生まれました。
「ベイツ・モーテル」のノーマンこと俳優のフレディ・ハイモアは、
ヴェラの息子フィンくんのゴッドファーザー(後見人)になるくらい、仲が良いそうです。
来年2019年、ヴェラはゴジラ65周年記念作品となる「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」に渡辺謙などと共に出演します。
日本のファンもますます増えるかもしれませんね。
では、ヴェラ・ファーミガのプライベート・データをまとめてみましょう!
本名 | ヴェラ・アン・ファミーガ |
生年月日 | 1973年8月6日(しし座) |
出生地 | アメリカ・ニュージャージー州クリフトン |
女優活動期間 | 1996年~現在 |
両親 | 父はシステムアナリスト。母は教師。 |
配偶者 | 俳優のセバスチャン・ロッシェ(1997年結婚、2004年離婚) ミュージシャンのレン・ホーキー(2008年結婚) |
子供 | 一男一女(2009年に息子フィン、2010年に娘ジッタ) |
著名な血縁 | 女優のタイッサ・ファーミガ(妹) ビジュアル・アーティストのアンドリアーナ・ファミーガ(従妹) |
身長 | 170cm |
インスタグラム |
息子ノーマン・ベイツを演じる俳優フレディ・ハイモア
フレディ・ハイモアは子役の頃から大活躍しているので、ご存知の人も多いはず。
有名なところでは映画「ネバーランド」のピーター役や、映画「チャーリーとチョコレート工場」のチャーリーなど。
映画「奇跡のシンフォニー」では、6か月の特訓を受けて、見事なギターの腕を見せてくれました。
子役の頃からフレディを知っている人には、彼のノーマン・ベイツは衝撃的だったのではないでしょうか?
あの可愛かった男の子が、殺人鬼の役なのですから!
フレディ演じるノーマンは、普通にしていればただの気弱な男の子に見えます。
ところが、突然なにかが憑依したように、ガラッと殺人鬼の顔に変わります。
フレディは対極にある二つの人格を、見事に演じ分けているのです。
しかも興味深いことに、「ベイツ・モーテル」の物語が進むごとに、ノーマン演じるフレディの顔は、だんだん母親役のヴェラ・ファーミガに似てきます。
この二人が本当の親子のように見えてくるから不思議です。
フレディは子役の頃から数々の演技賞を獲得していますが、
「ベイツ・モーテル」でもサターン賞のベストアクターなど、多数の賞にノミネートされました。
奇遇なことに、フレディが生まれた1992年は、映画「サイコ」で同じノーマンを演じた俳優アンソニー・パーキンスが亡くなった同じ年でした。
フレディ・ハイモアはロンドン出身。
父親は俳優のエドワード・ハイモア、母親はタレントのエージェントという、ショービジネスに携わる両親のもとに生まれました。
学業も優秀で、ケンブリッジ大学をダブルファースト(2科目で1等学位を取得)で卒業しています。
フレディは2017年から、テレビドラマ「グッド・ドクター 名医の条件」で主役を務めるだけでなく、製作にも携わり、シーズン2の1話の脚本も書いています。
彼の多才ぶりがうかがえて、これからの活躍も楽しみですね。
では、フレディ・ハイモアのパーソナル・データをまとめてみましょう!
本名 | アルフレッド・トーマス・ハイモア |
生年月日 | 1992年2月14日(みずがめ座) |
出生地 | イングランド・ロンドン |
俳優活動期間 | 1999年~現在 |
両親 | 父は俳優のエドワード・ハイモア。 母はタレントのエージェント。 |
身長 | 178cm |
インスタグラム |
「ベイツ・モーテル」のトリビア
ドラマ「ベイツ・モーテル」はマニアックなファンも多いことから、おもしろいトリビアもたくさんあります。
ドラマをさらに楽しんでいただくためにご紹介しましょう!
- ドラマ内のベイツ・モーテルのWi-Fiのパスワードは「MOTHER」である。
- フレディ・ハイモアをノーマン役に推したのは、母親役ノーマのヴェラ・ファーミガである。
- 「ベイツ・モーテル」でノーマとノーマンが住む家は、映画「サイコ」の家を忠実に再現している。
この家はヒッチコックが画家エドワード・ホッパーの代表作「線路脇の家」から着想を得た。1925年に描かれたこの絵は、1930年にニューヨーク近代美術館のコレクションの第1号となった作品である。 - ドラマの中の母ノーマ・ベイツの髪型や衣服などのファッションは、映画「サイコ」が製作された1960年頃のスタイルを取り入れている。他のキャストの衣類はドラマの時代設定どおり、現代風のファッションである。
- シーズン1の最初の何話かは、フレディ・ハイモアがケンブリッジ大学の学生だった頃に撮影された。
そのため、当時の撮影はケンブリッジの近辺で行われた。彼は大学卒業のため、半年ほど撮影を休まなければならなかった。 - マリオン・クレインを演じたリアーナは、あまりにも多忙なため、彼女のすべての登場シーンを5日で撮影した。
- リアーナ演じるマリオンが勤める不動産会社の名前「R.A. ブロック」は、「サイコ」の原作者ロバート・ブロックへのオマージュである。
- フレディ・ハイモア(ノーマン役)を始め、他の出演俳優であるネスター・カーボネル(ロメロ保安官役)やマックス・シエリオット(ディラン役)は、一部のエピソードの監督も務めている。ヴェラ・ファーミガも同様に監督を勧められたが断った。
- ベイツ家の家族はみなすべて、少なくとも誰かを1人殺している。
「ベイツ・モーテル シーズン5~最終章~」
その最終シーズンとなる「ベイツ・モーテル~最終章~」は、2019年7月に日本でもNetflixで配信が始まりました!
ノーマンの物語が最終的にどこで着地点を迎えるのか・・・気になる人は、最終話をお見逃しなく!